【連載企画】後編 | マーケティングDXを成功に導く「足元のDX」とは ~着実に成果を出すための1stステップ~

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
後編 | マーケティングDXを成功に導く「足元のDX」とは ~着実に成果を出すための1stステップ~

マーケティングDXにおける本質的な課題と、何から始めるべきかを、現場目線でDXコンサルタントが解説していく連載企画の後編になります。

前編の記事はこちら▼
【連載企画】前編 | マーケティングDXを成功に導く「足元のDX」とは ~着実に成果を出すための1stステップ~

中編の記事はこちら▼
【連載企画】中編 | マーケティングDXを成功に導く「足元のDX」とは ~着実に成果を出すための1stステップ~

可視化から始める足元のDX ―ExcelでイメージするBIの導入

足元のDXのスタートとなるデータの可視化、それをスピーディーに実現するセルフ型BI。セルフ型の指すとおり従来のBIに比べ複雑な設定は少ないものの、一方で技術的な設定があるのも事実。また「セルフ型BIの導入」という言葉自体、何もわからない状態だと尻込みしてしまう。今回はセルフ型BI導入の全体像と、導入にあたって具体的に何が必要となるのかを解説する。

前編の記事はこちら▼
【連載企画】前編 | マーケティングDXを成功に導く「足元のDX」とは ~着実に成果を出すための1stステップ~

中編の記事はこちら▼
【連載企画】中編 | マーケティングDXを成功に導く「足元のDX」とは ~着実に成果を出すための1stステップ~

従来型BIとセルフ型BIの違い

前回の記事の最後、唐突に「セルフ型BI」という言葉が登場した。本記事に入る前にこの「セルフ型BI」について簡単に補足する。
従来のBIツールは主に、

  • 構築が複雑でありシステム部門主導で行われる
  • その後のダッシュボード作成も難度が高くシステム部門にて作成される
  • 費用は比較的高額である

といった特長があった。これは「現場で自由な分析を行うのは難しい」&「導入ハードルが高い」というデメリットであり、これを解消するために生まれたのがいわゆる「セルフ型BI」と呼ばれる商品群である。特長として、

  • 従来型BIと比較して、システム部に依頼しなくても自身のデスクトップ上で操作可能
  • データの連携手段が多く手軽にデータを読み込むことができる
  • ダッシュボード作成では直感的な操作が可能
  •  費用は比較的安価であり数万~数十万円でスタートできる

というものがある。
あくまでセルフ型BIと呼ばれる商品群全体の特長であり、ここのケースではシステム部門のサポートが必要であることや、全社使用においては規模的に高額になるケースなどもあるが、従来型と比較して低いハードルで使用を開始することができる。
ではこれを前提として、セルフ型BIの導入について解説を始める。

Excelで集計する方法をベースに考える

大きなステップとしては、

  1. 各種データを集め
  2. データの形式を整え、集計しやすい形に調整し
  3. 可視化する

となる。これは、ExcelであろうがBIであろうが変わることはない必要なステップであり、これをベースに、まずはExcelで実現する具体的な形を考えてみる。

各種データを集め、整合し、可視化の図

まずは必要なデータを集めるところから始める。
顧客データ、購買データの場合、自社の基幹システムやECシステムなどにデータが存在している。ECシステムであれば管理画面上からデータ抽出ができる場合もあるが、基幹システムなどであればシステム部門での抽出作業が必要となるケースも多い。行動データの場合、Google Analyticsなどのツールからの抽出となり、多くは管理画面上から抽出が可能である。

抽出したデータはデスクトップ上でExcelに変換し、最終的な可視化に必要な形式のデータに調整する。
例えば購買データと顧客データを使用し、「年代別初回購入者数」を最終的に可視化したいとする。多くのケースでは下図のように、購買データはユーザーごとの購買単位のデータとなっており、顧客データには年代ではなく生年月日が記録されている。

データ調整例

ここから「年代別初回購入者数」を算出する場合、

  • 購買データから初回購入データの抽出
  • 顧客データの生年月日と購買データの初回購入日を計算し初回購入時点の年代を算出する

という計算が必要になる。

初回購入データは購入日昇順にしたデータに対し、顧客ID単位のCOUNTIFを範囲指定を動的にして算出することができる。また、年代算出は顧客ID軸でVLOOKUPをかけ2つの日付データを計算すればよい。
(上記は筆者が行うときに使う方法であり一例である)
最後は、できあがったデータを元に表やグラフを作成して完了する。

ここまでの流れは細かな違いはあれど、ある程度イメージできるものだと思う。
ではこれを、セルフ型BIを使用する場合に置き換えてみる。

ステップ1 データの抽出:クラウドDBの使用

自身のデスクトップ上でBIツールを動かし可視化するのであれば、データの抽出はExcelで行うときと同様に手動でデスクトップ上に抽出する形でも可能である。ただ現実問題として、

  •  データが大きすぎる
  •  定期的に更新されたデータを見る場合に手動の負担は大きい

という問題があるため、BIツールからアクセス可能なデータの保管先を検討する必要がある。クラウドのDBである。

有名どころであればGoogleのBigQuery、AWSのRedshift、MicrosftのAzureが候補となる。これらは主要なBIツールであれば基本的にどれも接続可能であるため、自社で既すでに契約中のDBがあればそれを利用する形がよい。もしない場合は、WEBの行動データが多くの場合Google Analyticsとなり、そこからのデータ抽出が簡単であるためGoogleのBigQueryをおすすめする。

BigQueryを使用する場合、一般的には以下のような連携の形となる。

BigQueryとBIツールの連携

分析目的であれば基幹データから1日1回、エクスポート処理を行ってもらう。「餅は餅屋」であり、システム部門やシステムベンダーが相談先となる。初期の構築にはコストは発生するが、この先定常的に分析を行う際に、都度データ抽出を依頼するよりはお互いにとって良い形だ。

また、この相談に不安がある場合は弊社のようなパートナー企業に相談するのも手である。多くのパートナー企業は、システム部門やベンダーとの間に入り調整するところからサポートしてくれるはずだ。

ステップ2 データの形式を整える:ETLの活用

クラウドDBに必要なデータが集まった後は、可視化に最適な形にデータを整形、調整するステップとなる。先程のExcelの例のように、購買データからユーザごとの初回購買日を計算して列を作成したり、顧客データと結合したり、などの作業となり、SQLのプログラミングが必要となる。

しかしながらSQLをいきなり書くというのはハードルが高い。またSQLを習得しても初期は誤ったデータ整形になっている可能性が高いなど少し時間のかかるアプローチだ。現在ではこれらの処理をUI上のドラッグ&ドロップや簡単な項目選択、Excelと同レベルの数式記述で行うことのできるETLツールを活用する方法が主流だ。

ETLツールはそれ単独の製品もあるが、クラウドDBと同じサービス内で提供されているもの(GoogleのDataflowやAmazonのAWS Glueなど)、BIツールに付随するものなどがある。今の自社の利用ツールで簡単に使用できるものがあればそれを使うのがよい。

データの形式を整える:ETLの活用

 

例えば上記はBIツール、Tableauに付随するETLツールのTableau Prepである。BIツールに付随するETLを使用する場合、ETLからアウトプットするデータがそのBIツールに最適な形になるという利点があるためおすすめだ。

また、ツール自体はそれほど難しくないものの、データをどのようなステップでどう加工していくか、また最終的なBI上での使い勝手を考えた時に、どのようなアウトプットが望ましいのかという点に経験が必要であることは否めないため、初期段階ではパートナーに入ってもらう形でもよい。中期的には自由に分析を行うためにも操作スキルを身につけることをおすすめする。各種ツールのベンダーから提供されている無償/有償含めたトレーニングを受けることが確実だ。

ステップ3 可視化:BIの活用

データの準備が整った後は、いよいよBIツール上での可視化となる。
セルフ型BIの主だったものにはTableau、MicrosoftのPowerpivotなどがあり、従来のBIツールと比べて非常に安価である。GoogleのDataPortalなどは無償からの使用開始も可能だ。

これらのBIを用いてKPIツリーやカスタマージャーニーを再現していくこととなるが、その操作は、比較的簡単に行えるよう設計されている。ここについてもETLと同様にパートナーやベンダーに依頼することができる。ただし、BI上の操作は今後の分析で主となるスキルであり、都度パートナーやベンダーに依頼することにならないよう、初期段階でトレーニングなどを利用して操作スキルを身につけていただくことを強く推奨する。もちろん初期構築をパートナー、ベンダーに依頼し、それと並行してトレーニングを受けるというような進め方もよい。

BIツール上での可視化

また、上記のように各種BIはビジュアライズの方法や、カスタマイズも幅広く、多彩な表現が可能でありそれを強く打ち出しているツールもある。ただし、ビジュアライズはデータを正しく読み取るために用いる手段であり、それが目的ではないことは留意すべきだ。多くの場面において、ビジュアライズは従来からの折れ線グラフ、棒グラフなどで十分であり、こだわったビジュアライズは必要な場面であれば作成するが、個人の分析やチーム内での共有レベルであれば不要である。

まとめ

ここまでが、セルフ型BIを使用したデータの抽出から可視化までの具体的なステップであり、まとめると次のような図になる。

DXまとめ

Excelを元にした流れと大枠が変わらないことが理解できるだろう。
部分的に自社では難しい箇所もあるかもしれないが、自社内で対応できる部分は自社で解決し、必要な場合は気軽にパートナーやベンダーにご相談いただくことをおすすめする。パートナーやベンダーはできる限りスキルトランスファーを行い、クライアント自社内で自走する姿を理想とすることが多く、従来の販売するだけの企業とは異なり親身に答えてくれるはずだ。

 

  • このエントリーをはてなブックマークに追加