DMP導入最初の一歩~整理すべき項目と次のステップとは?~

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アドテクノロジー(アドテク)というバズワードも市民権を得てきたようです。2014年現在ではDSP、SSP、アドエクスチェンジ、RTB、などといった用語にあるようにディスプレイ広告枠の連携により枠(掲載面)からヒト(オーディエンス)へ、といった配信の仕組みのお話しと、それをより良く活用するためのDMPという全体的なプラットフォームの話に大別できるかと思います。ここでは配信の仕組み側のお話しではなく、DMPを少し掘り下げて考えてみます。

DMPとは

DMP(データ・マネージメント・プラットフォーム)とは、人によってやや定義は異なりますがが、大きくは2つに大別できるでしょう。

  1. 特定のメディアが保有するデータを軸として、それにweb広告実績データ等を掛け合わせて広告配信に利用するもの
  2. 1に自社データを連携させてより多面的な分析を行い施策に活かすもの

1は「オープンDMP」や「パブリックDMP」、2は「プライベートDMP」と言われていることが多いようです。自社データとひとくくりにしましたが、売上、顧客、商品、営業活動、ソーシャルのつぶやきなどの第三者データ、などそれこそ様々です。
また1側に自社データを取り込むこともできるようになってきているので、「プライベートDMP」というのは明確な線引きがある訳ではなく、一緒に語られることも多いと感じます。

<プライベートDMPはこちらの記事も参考に>
プライベートDMPの基礎知識と目的に合った最適な構築法

webアクセス解析ツールや広告計測ツールは広告媒体の実績データを取り込むことが可能で、更にそれ以外のデータとも連携できる、という1の拡充と2への流れが今の潮流と言えるでしょう。
DSPなど広告配信のプラットフォームも他のweb関連データを取り込めることがありますし、またECのカートシステムでもアクセス解析と連携でき、そこからメール送信可能なものがあります。

また、BI(ビジネスインテリジェンス)と言われる分野で様々な経営数値を統合して分析に活用されてきたITツールでも、webマーケティングデータの取り込み・分析がよりやりやすくなるなど進化をとげています。
SFA(営業支援システム)やCRM(顧客管理システム)といった分野でも、インターネット上で稼働させるクラウド製品を中心にwebデータとのより緊密な連携が取れるようになってきており、ひと口にDMPと言っても多くのプレイヤーがいる状況だと言って良いでしょう。 

DMP導入検討時のステップ

このような状況で「DMPの有用性は理解できても導入に向けて」となると難しいとお感じのマーケッターも多いと思います。広告代理店の担当やSIパートナーに相談しても期待する回答が得られない、という経験をされたこともあるのではないでしょうか。ですが、ここではまず「基本」に立ち返ることが必要だと思います。

  • DMPを構築して「何を」実現したいのか。
  • 「何が」実現できればビジネスゴールに近づけるのか。
  • その優先度は? 

単にDMPと言っても様々な観点から捉えることができます。web広告の効率運用、顧客情報を活用したOne to Oneマーケティング、自社接点と結びつけた営業効率化、販売チャネルの最適化、新規商品・サービスの開発。それぞれが一部代替可能なため整理する際にはどうしても色々と派生を考えがちでもあります。
DMP自体がアドテクノロジーでくくられがちな用語のためweb広告側面にフォーカスされがちですが、まずは広告という枠組自体を取り払う必要を感じます。DMPという言葉には様々な観点があり、いずれも技術的には実現可能です。しかし、全てを一度に手にすることは現実的ではないことは皆さん自身がよく解っていると思います。
また、あれもこれもと欲張るほど全社にまたがる一大プロジェクトになって、責任範囲を含めた業務フロー整備など別の座組みが必要でしょう。(よって、事例などではCMOとCIOが手を取って、といったことが言われるのでしょう。トップが音頭を取れば確かに早いですね。そう働きかけるのも部下の仕事、と言うと筆者の首を締めるのでやめておきます。) 

DMPという言葉ありきではなく、改めて目的設定を考えてみましょう。
それがDMP構築の検討時のステップです。

DMP構築検討ステップ図
色々なデータを使って色々なことができそうだ。では、どうやって目的を決めるか、です。教科書的に言えば、まずは「自社ビジネスに効果的」なところにフォーカスすべきでしょう。

例えば、ECサイトなどでは新規顧客の獲得も大切ですが、リピート施策も大切なはずです。ロイヤルカスタマーが売上の大部分を占める、となれば、ロイヤルカスタマーになってもらう施策を効率良く行わねばなりません。そのストーリーにはどういったデータが必要でしょうか。
自社のビジネスモデルと売上を分解し、より効果的な施策のストーリーが最も優先度が高いはずです。(売上インパクトが小さいところにわざわざコストをかけて効率化や自動化を図るのは違いますよね。)

それを見出すためにデータ連携して分析するのだ、という方もいらっしゃいます。その場合、「仮説」がないとどこに向かっているのかわからなくなってしまいます。仮説を見出すためのデータ分析はDMPとは目的を異にしている、と思います。
最終的に一つのプラットフォームに行き着くことはあっても最初からそれを一緒に考えるのは間違いです。そういった事例もありますが、おそらくはそれが最初からの目的ではなかった、あるいはそこまで見据えて先行投資した、のいずれかです。もし自社でもそれが望めるなら大きく取り組むことに否定的ではありません。

他方、既存の売上ではなく新規にECを立ち上げる、など新たな取り組みの場合でも、いきなりDMP構想には行き着かないと思います。この場合も「こうならこうなるはずだ」と言った仮説シナリオに基づき必要となる施策を検討せねばPDCAは回せませんし、力の入れどころがわからなくなってしまいます。事前に立てられる仮説シナリオを基にDMPで何を実現するか、をしっかり決められれば、どのデータを取り、連携させ、どこを自動化させるかははっきりしてくるはずです。

DMP最初の一歩

さて、目的や仮説といった教科書的なお話しから、もう少し現実的なところで次の一歩、を考えてみたいと思います。
既に解析などwebマーケ関連のツールは導入済み、web広告も連携済み、というのはもはや珍しくありません。売上データや顧客データとの連携も人手ででも対応できることが多いです。 

web広告の最適化、web施策のデータ連携という目的であればこの流れで問題ないかと思います。ここで更にプライベートDMP領域の別の新たなデータを連携しようとしたり、分析や広告配信を自動化しようと思って次の一歩が止まるケースが多いのではないでしょうか。代理店やSIベンダーに見積を取ると想定以上の見積が出てきてしまうこともあるでしょう。

DMP構築してこんなに良いことが、という売り文句としてベンダーから「データ連携が容易にできる」というプレゼンを受けたことがある方もいらっしゃるかと思いますが、ここで言う「容易」は今までのシステムと比較して、です。今すぐ楽にお安く、という訳ではないので注意が必要です。(もちろん今までと比較すれば早く楽にお安くなっているとは思います。) 

では、どう判断するのか、ということですが、ここは先に触れてたとおりビジネスゴールによりますので、改めて「目的」を整理すべきでしょう。見合うか見合わないか、別の方策はないのか、改めて検討すべきです。
DMP構築を「進めたい」というのはその通りですが、進められない理由を整理し明確にしましょう。ネックはひとつとは限りませんが、できない理由が整理できればネックを取り払う難易度の問題が検討できます。 

例えば、自社製品・サービスの購買年齢層がわかっていれば、その年齢層だけに向けての施策を行うことでより購買率を高めることができそうです。特定ページの閲覧者へフォローメール配信などが有用かと思われますが、ここを効率的に一元化したい、すべき、というときは、かかるコストと効率化による削減コスト、この施策での売上アップ目標がポイントになってくるかと思います。ですが、そもそもメール配信は未着手でその担い手がいない、となったらまずはそこからの話になるでしょう。また年齢は購買時にしか取得していない、などであればweb問合せ段階で取得する、といったことがまず必要になります。

ここまでくればひとつのプラットフォーム、ということにこだわる必要もないかと思います。目的次第では無理にひとつにまとめなくても達成できるものもあるのでしょう。ひとつにまとめた方が何かと便利なのは間違いありません。ですが、予算も期間も人も有限な中で目的を達成することに主軸を置くべきでしょう。それでも将来の拡張性・広がりが気になるのは仕方がないのですが、環境変化も激しいので、あれこれ気にしすぎてしまうと前には進みません。決して安くない投資ですから、周りも巻き込んで検討し意思決定すべきでしょう。

 

実際のDMP構築の手段

ビジネスゴールもしっかり設定でき、DMP構築に向けて動いたとしましょう。
ここで選択肢が幾つか出てきます。
もちろん目的・優先度次第で選択肢が限定されることもあります。

  1.  既存ツールに連携(web解析ツールなど)
  2.   新規ツールに連携(CRMツールなど)
  3.  自社開発(完全に独自開発ではなくパッケージの組み合わせやカスタマイズ)

①    既存ツール
webアクセス解析ツールに自社独自データをアップロードして紐付けるなど、近年機能面の進化は著しいです。また、ダッシュボード上でそれも含めて見ることも可能です。インターフェースなどは慣れたものを使えますので即時的な効果を得やすいのではないか、と思います。
クラウド上のツールだとバージョンが上がり、顧客データにもとづいた広告配信ができるようになる、など機能面での今後の充実も期待できます。機能に関してはツールベンダー次第、ということになりますが、自社データの連携などは取り込むための加工が必要になることが多いので、そこの手間やシステム開発、フローを決めることが必要になってきます。

②    新規ツール
目的が既存ツールでは実現できない、またはコストがかかりすぎてしまう場合は新規ツールを検討することと思います。例えば、解析データを顧客管理ツールに取り込むなどすれば、既存ツールには難しいかもしれない顧客のタイミングキャッチなどが可能になるでしょう。新規ツールはゼロからになりますので、構築だけでなく習熟の点も勘案しておく必要があります。目的が明確で、ある程度特化している場合には検討すべきでしょう。範囲が広い場合は③を検討すべきかと思います。

③ 自社開発
完全に自社でゼロから開発するのはおそらく余程のコスト・人員がないと難しいと思います。ここではある程度はパッケージ製品を導入し自社用に構築する、という形をイメージしています。BIツールも裏側で持つデータなどは開発が入りますので、こちらのお話しです。自社開発の場合、目的達成はもちろんですが、独自性を出せる、自社に合わせた組織体系やフローも取り入れやすくなるといったメリットが出てきます。

ですが、コストももちろんですが融通をきかせたいがゆえに構築期間が長引いたり、その後の保守運用も検討しておく必要があります。①②でもデータ連携に関しては多少なりのシステム部門やSIベンダーの関与が必要ですが、自社開発の場合はより関与度が高くなります。先に述べた通りかつてと比較すれば早く安く構築できるようになってきていますが、システム部門と目的がしっかりすり合っていなければ目的が達成できない、となりかねませんのでマーケティング×ITの強い関係性構築が必須です。

いずれの場合にしても、IT投資側面もあるので、その観点でも触れておきます。企業により様々ですが、IT投資にも目的はあります。ネットワークなどインフラとして絶対必要なもの、負荷軽減など効率化を図る守備的なもの、情報共有や戦略面での攻め要素、まったく新しい開拓をするもの、といった観点です。

よく語られるDMPはどちらかと言えば新たな開拓要素や攻め要素が強いですが、目的次第では守備要素にもなり得ます。こういった目的に沿って、この捉え方も関係者で認識をすり合わせなければなりません。

マーケティング側にKPIがあるようにIT側にもKPIがあります。もう少し下世話な言い方をすると評価、と言っても良いでしょう。

例えば、マーケティング側がメルマガの効率化による売上アップが目標なら、IT側では自動化による負荷軽減がひとつの目標になり得たりします。投資要素が強ければシステム選定段階で使い勝手が好評なものを導入して行くこともできますが、守備要素が強くコスト制約があればマニュアル整備やユーザ教育をIT部門で負担する必要が出てくるかもしれません。もちろんIT部門での制約や負荷ばかりに目を向けていてはメルマガの効率化、自動化、売上アップといった目的がブレてしまいますので目的の明確化は必須です。

お互いが認識を共有しておかなければマーケティング×ITの関係性構築はできませんし、何が成功で何が失敗か、のPDCAも回せなくなってしまいます。こうなってしまうと次にこのデータを連携させて・・・、といったDMPを進化させていく構想も難しくなります。成功企業のように全社的に、あるいは上位役職者がDMPを推進すれば話は早いように、一人で、一つのチームで、推進することは非常に難しい領域です。

 

最後に

ご存知の方も多いと思いますが、BIツールは昔からマーケティング分野で活用されてきました。(ビールと紙オムツの話は有名ですね。)かつては基幹システムデータなどを統合して分析してきたのですが、webの伸びに比例してweb関連データが増え、web上での広告配信やフォローマーケティングも洗練された現在、改めてDMPという言葉でマーケティングが見直されているのだと思います。

ビッグデータという言葉も市民権を得た感がありますが、web系のデータはとにかくボリュームが大きいのも特徴です。

あらゆるデータから最適解を導き、自社ビジネスを成功させることはマーケッターのひとつの理想だと思います。データ量も大きくweb系では難しかったそれが(今までよりは容易に)手に入れることができる状況です。が、繰り返しになりますが、自社にとって「今」、「今後」何が必要なのかがきちんと整理されずに、DMPという概念・ワードだけで、とりあえずデータを連携させたい、ということはあり得ません。

売上に直結する部分で、最適化できていない広告配信を効率的に行う、というのも立派なDMPです。
まず本当に行うべきことか見極め、整理されると自ずと次の一手も見えてくるかと思います。
ここの舵取りは今までのマーケティング部門に求められてきたミッションとやや異なるかもしれませんが、成功企業だけができて自社ではできないという理由にはなりません。

周りの理解や環境もあるでしょう。ですが、これからはデータがあって当然、連携できて当然、分析できて当然、という時代だと思います。より良いマーケティングと自社ビジネスの成功のため拙稿が一助になれば幸いです。

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