精度の高いデータ分析を実現する「3つの基本手法」【マーケター・広告担当者必見!】|ウェブ部

精度の高いデータ分析を実現する「3つの基本手法」【マーケター・広告担当者必見!】

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【セミナーレポート】マーケター必見!精度の高いデータ分析を実現する「3つのポイント」

年々、デジタルマーケティングの重要性が高まっていく昨今。
実にさまざまな数値がデータ化され、閲覧できるようになりましたが、それらをどう分析すればいいのかわからないといったお悩みのを持つ方も多いのではないでしょうか。

今回の記事では、弊社株式会社メディックスのシニアテクニカルエンジニア 笠井大輔と、データアナリスト 西岡春奈が登壇したセミナー「Web担当者Forumミーティング 2021秋」の内容をお届けします。

本セミナーでは、多くの人がつまずきがちなマーケティングにおけるデータ分析を成功に導く「3つの基本」について、初心者の方にも分かりやすく解説しています。
マーケティングや広告に関するデータ分析の手法が分からない、時間をかけて分析をしても成果につながらないという方は、ぜひ最後までご覧いただき、基本を学んでいただければ幸いです。

成果につながるデータ分析を叶える「3つの基本手法」

そもそも、なんのためにデータを分析するのでしょうか。
その目的は「マーケティング活動の目標を達成するため」であると西岡は語ります。

データを正しく分析すれば、
●目標に対して現状がどの程度なのか
●どういうことを行えば目標に近付けるのか
を把握することができます。

しかし、実際には、データ分析をしてもなかなか成果につながらない、と感じている方も多いことでしょう。

なぜ、データ分析が成果につながらないのでしょうか。その原因は以下の3点にあると西岡は言います。

    1. 「何を見るのか」が定まっていないから
    2. 「何で見るのか」が整備されていないから
    3. 「どうやって見るのか」が確立されていないから

「『何を見るのか』が定まっていないと、大量のデータの中に溺れてしまいます。『何で見るのか』が整備されていないと、ほしいデータが見つからなかったりします。また、『どうやって見るのか』が確立されていないと、せっかく施策立案しても『根拠が足りない』と上司に戻されてしまったりもします」(西岡)

こうした事態を防ぐためには、

  1. 「何を見るのか」を定める
  2. 「何で見るのか」を整備する
  3. 「どうやって見るのか」を確立する

この3点を押さえる必要があります。

では、この3点はデータ分析のどこにあたるのでしょうか。

データ分析の中でも、
目的の整理が「何を見る」
データの取得・集計の部分が「何で見る」
考察・仮説立ての部分が「どうやって見る」
に当たると西岡は語ります。

データ分析から成果創出までのフェーズは、以下のようになります。

成果につながるデータ分析を叶えるための基本手法1:「何を見るのか」目的を整理し定める

データを見る・分析するということは、『目的』ではなく『手段』なんです」と笠井は語ります。
「ではなんのための手段なのか? それは『目標』を達成するための手段です。目標を達成するためには、目標を構成する要素をひとつひとつ改善していくことが必要ですが、分析すること自体が何かを改善するということはありません分析は、あくまでこの改善のサポートであるという位置づけになります」

目標を構成する要素は、以下のような「KPIツリー」で示されます。

 

一番上に大きな目標=KGIがあり、その下にKGIを構成するひとつひとつの下部要素=KPIがあって、それぞれに目標が設定されています。

まずは、これらの現状を把握すること。このツリー全体を見て、何を改善しなくてはいけないのか(課題)にフォーカスすることこれがまず第1ステップになります。そのうえで、フォーカスした課題に対して『なぜ未達なのか・どうしたら改善できるのか』、その原因を探ることが2つ目のステップになります」(笠井)

webサイトの流入からCVを例に取って見てみましょう。

現状の全体像は、

  1. ツリーを整理
  2. 各要素の目標を整理
  3. 現状の数字を当てはめてみる

この3ステップで把握することができます。

下記の例で言うと、KGIがCV数。KPIがフォーム到達数やフォーム完遂率などになります。これらをすべて整理したものがKPIツリーとなります。
そこに各要素の目標や現状の数字(=今期実績)を入れ込んだものが下の表となります。

表を見ると、目標と実績に乖離がある箇所=課題が明らかになります。
こちら例で言うと「非直帰率」がこれに当たります。これで課題に焦点をあてることができました。

 

この段階で躓いてしまう場合、KPI自体が設計できていないか、実績のデータがないことが原因として考えられます」と笠井。
KPI自体が設計できていないのであれば、データに向き合う前に、まずは一歩戻って、ビジネスやマーケティングという大きな粒度で今見ている領域と向き合う必要があります」

「実績のデータがない」という事態に陥っている場合、

  • 直接的にKPIを表すデータがない
  • データが分散している

このどちらかであると考えられます。

「直接的にKPIを表すデータがない」ケースを考えてみましょう。例えば「購入意欲」をはかる直接的なデータはありません。
その場合は「購入意欲のあるユーザーの想定される行動」を考え、その行動から生み出されるデータを設定するといいでしょう。

続いて、「データが分散している」ケースです。
先程例示したKPIツリーは極めてシンプルなものでしたが、実際のKPIツリーは広くユーザーの行動を追うような設計となるため、さまざまなツールにデータが分散してしまうことがあるかもしれません。
そういう時は、事前に「どのツールからデータを確保するのか」「本当にデータを確保できるのか」を確かめておくようにしましょう。

成果につながるデータ分析を叶えるための基本手法2:どうやって見るのかを検討する(考察・仮設立て)

現状把握ができたら、なぜそのKPIが課題になってしまっているのかという原因を考えていきましょう。

まず行うべきは、課題の解像度を上げていく作業です。そのためには、KPIを更に分解し、細かい粒度でデータを見ることが必要になります」(笠井)

データを分解するためには、別のデータを組み合わせていく必要があります。
組み合わせられるデータは無数にあり、闇雲にデータを組み合わせるのは非効率なため、一度データやツールから離れて「何がそのKPIに影響しそうなのか」を考え、優先順位をつけたうえで分解していきましょう。

例えば、非直帰率が課題となっている場合。
流入経路に問題があるんじゃないか、集客施策に問題があるんじゃないか、コンテンツに問題があるんじゃないか…。
そうした”あたり”をつけた上でデータを組み合わせ、KPIを分解した表が以下となります。

流入経路の場合、「流入経路1」が、ボリュームがあるのに非直帰率が低く、課題となっていることが分かります。
日別で見ると、4月4日以降は非直帰率が悪化していることが分かり、その日に反映した施策が悪影響を及ぼしている可能性が考えられます。

このように、KPIを分解すると、特徴のあるポイントを見つけることができます。

ただし、と笠井は続けます。
「データ上で特徴のあるポイントを見つけられても、なぜそうなっているのかという最終的な回答は出てきません。ここから『データ以外の情報』も踏まえて考えていく必要があります」

例えば、サイトの流入数が大幅に減少した日があったとします。
何も知らない人であれば、さまざまなデータを掛け合わせてようやく『この広告からの流入が減ったんだ』ということが分かります。
しかし、実際に広告を運用している人であれば、『その日にこの広告を止めた』ということ(=データ以外の情報)を理解しているため、なぜ流入数が減少しているかをすぐに理解することができます。

データ以外の情報を持っていればすぐに済むような話でも、データだけで戦おうとすると、結構時間がかかってしまう。『データしか使っちゃいけない』というルールはありませんので、データ以外の情報も掛け合わせて課題を明確にしていく必要があります」と笠井は語ります。

「データ以外の情報」には、行った施策のスケジュールや目的、具体的な内容などが挙げられます。
こうした情報は事前に整理をしておき、データと掛け合わせて課題を明確にしていきましょう。

ここまでがPDCAサイクルの中における「C」の部分にあたり、データから原因仮説が出来上がった状態となります。

ただし、上図における「KGIの設定」や「KPIの整理」、「目標数値の設定」などは「P(plan)」の段階で決まっていなければならないものです。
また、実績データが本当にこのツールから取れるかどうかの判断は「P」から「D(do)」の中で事前に押さえておかなければなりません。

良質な「C」を行うためには、「P」や「D」の段階からしっかり考えておかなければならないのです。

成果につながるデータ分析を叶えるための基本手法3:何で見るのかを明確にする(データ取得・集計・可視化)

データを見るためには、どんなツールを使うにしても、

  1. データの抽出 / 確保
  2. 集計
  3. 可視化

という3ステップが必要になります。

「よく、『データを手動で抽出し、Excelで集計し、ExcelやPowerPointで可視化する』という”人の手によるやり方”がレガシーな例として挙げられますが、弊社では、必ずしもこの方法がNGであるとは考えていません。あくまで目的は『目標を達成する』ことですので、この方法でも進められているのであれば問題はないのです」(笠井)

ただし、実態として考えなければならない課題も存在します。

まずは「時間」の課題です。
分析は「KPIの目標と実績=現状把握」と「課題分析」のフェーズに分かれて行います。
現状把握がほぼ決まった形のデータになるのに対し、課題分析は状況次第で変化するため、定型化することができません。
そのため、できる限り課題分析に時間を割くようにし、現状把握には時間をかけすぎないことが求められます。

これをさらに悪化させる原因として「データの分散」が挙げられます。
顧客データや購買データは自社サーバーに、Web上の行動データは解析ツールなど、さまざまなツールにデータが分散していると、これを手動で抽出していくだけでも時間を要してしまいます。

さらに、こうした状況は課題分析のフェーズでも悪影響を及ぼします。
「データが足りない」「データの期間を伸ばしたい」となると、再び手動でデータ抽出をし直さなければならないため、さらに考える時間が削られていってしまいます。

こうした課題を抱えているのであれば、BIツール(ビジネスインテリジェンスツール)の活用がおすすめです。

BIツールは、データの抽出~集計~可視化までを自動化することで、現状把握にかける時間を大幅に短縮してくれます。
これにより、考えるための時間を確保することができるのです。

「BIツールを導入する目的は、分析に必要なデータが揃った状態を作り上げ、データを見て頭で考える時間を最大限確保することにあります。今回のように『工数削減』を第一に考えるのであれば、低価格帯のツールを検討し、削減できる工数とツール費用が見合うものを選ぶことをおすすめします」(笠井)

BigQuery&データポータルというgoogle提供の組み合わせの場合、データを蓄積するBigQueryは従量課金制で無償枠も多く、低価格に収まるケースが多くなっています。また、溜めたデータを集計・可視化するデータポータルは、現在googleから無償で提供されています(2021年12月現在)。

「セルフBI」とも呼ばれるTableauは、1ライセンス=1人の使用であれば年間10万円程度で利用可能ですので、こちらもおすすめです。

ここまでのまとめ

  1. 分析の基本は現状把握からの課題特定どちらも大きい数字から分解し、徐々に解像度を上げていく
  2. データのみでなく、データ以外の視点も組み合わせて課題を考えていく
  3. 分析のハードルとなる「データの準備 / 集計」といった点を自動化するBIツールと組み合わせることで、分析のための時間を最大限確保する

成果につながるマーケティングデータ分析事例

ここからは具体な事例のお話になります。

弊社が今回のようなお話をご提供させていただいたクライアント様が一社いらっしゃいます。そのクライアント様が、取り組みを始める以前はどういう状態だったのか。そして、取り組みを通じてどう変わっていったのか、という点を解説します。

具体例の事業は以下のとおりです。

<クライアント詳細>

●単品リピート通販の商材を扱う。販路は公式ウェブサイトがメイン
●お試し購入→定期加入→定期継続の2ステップモデル
●新規獲得にコストをかけて、定期継続によってコストを回収していくモデル

登場人物

この企業では、「何を見る」の整理のために、まず事業全体のKPIツリーを作成しました。

なぜ、事業全体のKPIツリーを作成したのでしょうか。
その理由は2つです。
1つ目は「認識統一のため」です。

各チームには、以下のように個別KPIが与えられていました。

●アクイジションチーム:KPI=CPA15,000円でお試し購入を10,000件獲得する
●CRMチーム:KPI=定期引上率20%で、2,000人を定期に引き上げる

事業全体のKPIツリーを作成する以前は、各チームがチームごとの個別KPIを達成すべく、個別最適に走っていました。
その結果、以下のような悪循環に陥ってしまっていたのです。

事業全体のKPIツリーを作成することで、各チームに定められたKPIが「KGIや他チームのKPIとどう関係するのか」を理解し、認識を統一することに成功しました。

2つ目は「集計時間の短縮」です。
事業全体のKPIツリーを作成する前は、各チームがデータの集計に時間を取られてしまっていました。
その結果、集計結果の考察や、考察からの施策立案に時間をかけることができず、経営層からは「考察や施策の根拠が弱い」とされていました。

事業全体のKPIツリーを作成したことによって、各チームが確認すべきKPIや下層指標を明確に定めることができました。
これにより、定点的に見る指標は必要時すぐに確認できる状態が整い、考察や施策立案に時間をかけられるようになりました。

ここで、実際に作成した事業全体のKPIツリーを見てみましょう。

KPIツリーを作成したからといって、各チームが担当するKPIに大幅な変更はありません。
しかし、KPIが、KGIや他チームのKPIとどう連携しているのかは認識できた状態となります。

続いて「何で見る」の整備に入っていきましょう。

KPIツリーが完成したあとは、KPIレポートの作成に入ります。
この事例では、始めはExcelでレポート作成を行い、その運用が軌道に乗ってからTableauへと移行することにしました。

まずExcelで運用を始めた理由は、
●各チームがKPIを見る習慣を早くつけたかった
●指標の修正追加にすぐ対応できるようにしたかった
この2つです。

BIツールは大変便利ではありますが、BI構築や構築後の修正には時間がかかります。
そのため、まずはExcelでの運用から開始しました。

実際のKPIレポートの構築図は以下のとおりです。

 

「Excelを利用していた時は、各DBのデータやWeb解析のデータ、各種広告などのデータをExcelに集約・可視化し、そのExcelファイルを各現場の担当者が見にいく、という形を取っていました」(西岡)

「Tableauに切り替えてからは、Tableau上でデータ統合を行っています。Tableauでデータを集約・可視化をし、そのレポートをオンライン上にアップロードして、各現場担当者が見にいくという形になっています。このように、事業全体のKPIツリーの整理およびKPIレポートの作成を行ったことで、データ集計にかける時間をかなり短縮することができました。」(西岡)

最後に「どうやって見る」=データ分析フェーズについて考えていきます。このデータ分析フェーズも、さらに2つに分けることができます。

1つ目は、KPIレポートを用いて行う現状把握
2つ目は、追加データを用いて行う追加分析 です。
現状把握では、「目標達成のためにアクションを取る必要があるのかどうか」を見極めます。
追加データでは、「取る必要があるとすればどんなアクションを行うべきか」を判断します。

まずは現状把握の進め方を説明します。

KGIやKPIは、シンプルに目標と比較して達成しているかどうかを確認します。
目標が立てられていない下層指標は、過去の数値変動と比較します。
確認の結果、KPIが未達であり、原因特定が必要な場合は追加分析を行います。

今回の場合、KGIである定期継続者数が未達であり、その原因として、定期引上率の未達が大きく影響していることが分かりました。
そのため、定期引上率低下要因を明らかにし、対策を取るための深堀り分析を行っていきます。

分析内容を定めるために、まずは定期引上率を上げるためにできることを考え、そこから逆算していきます。

お試し獲得フェーズに関する分析は、以下の仮説をもとに分析軸を決定します。

この分析軸をもとにデータを深堀り分析した結果、以下のことが分かりました。

  • 定期引上率が下がり始めたのと同時期に、お試し購入者が増えた媒体がある
  • その媒体経由でのお試し購入者は年代が若い
  • 若い年代の定期引上率は低い

つまり、この媒体(以下の表における「媒体B」)への出稿強化が、定期引上率の低下を招いていたというわけです。

この結果を受け、媒体Bで接触する年代を上げるためのアクションを実施。ターゲティングの条件追加や、クリエイティブ・訴求の変更を行いました。

続いて、CRMフェーズの深堀り分析を行っていきます。
CRMフェーズでは、定期購入までのユーザー行動から分析軸を洗い出します。

 

この分析軸をもとにデータを深堀り分析した結果、メール開封率とカート追加率が低下していることが分かりました。
メール開封率の低下はメール件名に、カート追加率の低下はLPにそれぞれ課題があると考えられたため、それぞれの変更を行いました。

まとめ

データ分析においては、

  • 「何を見る」フェーズ:データを見るときに迷子にならない
  • 「何で見る」フェーズ:データ集計に時間をかけない
  • 「どうやって見る」フェーズ:考察や根拠を深める

ことが重要となります。

「この3つの基本しっかり押さえておくと、立案できる施策の精度が上がり、成果にもつながりやすくなってきます」(西岡)

また、この3つのフェーズでは、それぞれ異なる能力が求められます。

より精度の高いデータ分析を行い、目標達成につなげるためには、今回紹介した3つのポイントを押さえておくことはもちろん、豊富な知見が求められます。

「ただし、どの能力も一朝一夕で身につくものではなく、能力を磨くための時間をなかなか取れない方もいらっしゃると思います。そういった方々向けに、弊社では『M-Data シリーズ』というクライアント様の課題に合わせてピンポイントで活用出来るデータソリューションサービスを提供しています」と西岡。

データ周りの目標・課題はクライアント様毎に違うかと思います。状況に合わせ必要な力も変わってきますので、お困りの方は一度ご相談下さい。

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